実体顕微鏡 テスタージグ 光学ユニット検討-発光ユニットの検討

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前回、発光ユニットには、下記の問題があると説明させていただきました。
・発光ユニット画像は、観察対象物同様に拡大されてしまう。
・左目への投影なので、発光ユニットの正面ではなく、対角となる右端が映る。
・数値の投影位置が変えられない。変えると、焦点がずれてしまう。
今回は、これらの問題解決方法について説明させていただきます。

■ 発光ユニットに使用する表示装置

発光ユニットには、0.91インチのOLED SSD1306(128×32)を使用しました。
入手が容易かつ、小型のOLEDです。
このOLEDを使用した理由は、下記の理由です。

a. 安価で容易に入手できること
Amazonでも購入でき、1つ当たりの単価も1コイン以下で買えます。
b. 顕微鏡裏に格納可能であること
基板サイズがWxH=38mmx12mmくらいなので、邪魔にならない。
c. ドット自体が発光するので、ハーフミラーに投影可能であること
バックライト方式では、ハーフミラーが透けないから。
d. グラフィック表示ライブラリがそろっている
グラフィック描画ライブラリが充実しているので、容易に課題を解決できるかもしれない。

OLEDを使用して、課題解決を行っていきます。

■ 発光ユニット画像は、観察対象物同様に拡大されてしまう

私の使用している実体顕微鏡の拡大率は、6.6倍~40倍です。
基板チェック時には、6.6倍を使用しているので、まずは、これで使用することを目標としました。
まずは、使えそうなフォントのチョイス。ここを見ながら、下記の3つのフォントセットをピックアップし、顕微鏡でのぞいてみました。太字部分がフォントのサイズ(ドット数)を示しています。
6.6倍でもb c は、視野を妨げるのと、フォントサイズの制約で他の課題解決が不可能でしたので、結果的には、aしか選択の余地はありませんでした。
フォントサイズが小さいので、きれいとは言い難いですが、可読可能なフォントでしたので、6.6倍での使用には問題ないと判断しました。拡大率が大きくなると、どうしても視野を邪魔してしまうので、実用範囲とは言い難いです。解決するには、もっと光学的な解決手段が必要になるかと思います。
ただ、基板チェックでは6.6倍以外使用しないので、高倍率での使用はあきらめ割り切ることとしました。

a. u8g2_font_4×6_tf     ← これ1択
b. u8g2_font_7×13_tr
c. u8g2_font_10×20_tr

実際にOLEDに表示すると、このようなサイズになります。(カメラでフォントをとらえきれませんでした。)

OLEDフォント表示

■ 左目への投影なので、発光ユニットの正面ではなく、対角となる右端が映る

最初に発生している現象を説明します。
下図は、顕微鏡を上から見た絵です。現象は期待していた位置より、大きく右にずれた位置が見えています。

現象(上)

最初はハーフミラーの取り付け位置に問題があるのかと思ったのですが、冷静に考えると当たり前の現象です。実体顕微鏡は両目でのぞいた時に立体に見せるため、視差ができるように設計されています。
このため、光軸は観測物に対して真上ではなく、観測物中心に向いています。
下図は、顕微鏡を横から見た時の光軸ですが、左側が期待していた光軸で、右側が実際の光軸です。
対物レンズと観測対象物の間にミラーを入れると、左目の画像が右方向を見てしまうのは当たり前です。
基本的な対処方法は単純で、OLEDの位置を右にずらせば問題は解消します。

現象(横)

下図はテスタージグを顕微鏡下から撮影したものです。
最終的には下図のように左目に対して、右側に表示するように位置を調整しました。

■ 数値の投影位置が変えられない。変えると、焦点がずれてしまう

テスター数値の投影を視野の邪魔にならない位置に移動しようとすると、投影が暗くなったり、最悪みえなくなる現象が見られました。
原因は、顕微鏡が対物レンズで像を拡大している都合上、下図のように顕微鏡視野の中心付近と周辺付近で映し出す位置がずれるためです。

ミラーの位置によって少し像がずれるので、対応方法としては、2つ考えられます。
a. ミラーを大きめにして、OLEDの像をとらえる範囲を広くする
b. ミラー位置に応じて、OLEDの表示位置を変える

a.は、ミラーを大きくすると、左目画像の違和感がより大きくなることがわかったので却下。
b.は、いくつかの位置を登録していれば、最適な像を得ることができそうです。
具体的には、下図のようにあらかじめミラーに収まるように表示枠の位置調整を行っておき、ミラー位置により切り替えるようにしました。
いくつか実験した結果、視野中央部と視野周辺部の2か所について位置調整しておけば、全体をカバーできることもわかりました。

発光ユニットは、ここまで原因と解決方法が分かったので、あとは機能設計で、使い勝手を良くすればよさそうな感じになりました。
課題は、素人にはすぐにピンとくるものではないので、なるべく論理的な原因分析を行いながら、実際に試してました。
ここまでの原因解析に自信があるわけではないですが、つじつまはあっていると思っています。

■ まだまだ続きます

まだまだ続きます。週1ペースで更新していきますので、よかったら、また見てください。

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