わなの作動センサーを作成してから1年ほど運用を行ったのですが、色々と不満が出てきました。
現状は2点ほど不満を感じています。
今回はそのうちの一つを解決するために「わな作動センサー中継器」を試作しました。
LoRa(Long Range)規格は、2点ほど弱点があります。
1. 通信速度が遅い
2. 山影、ビル等の遮蔽物により通信障害が発生する
その他、感覚的なものになりますが、気象条件(雪、雨、霧)により電波が届きにくくなるように思います。
私の拠点と狩場は下記のような海岸線場所に位置しており、親機からもっとも遠い場所は約2kmほどです。
簡略化すると下記のような地形で、山の裏側にも狩場があります。
山の裏側となるエリアは、電波が届かなかったり、天候によっては通信障害が発生しやすいように感じます。
私がカバーしているエリアは、道が舗装されていないような山奥、谷底エリアなので、悪天候時にはセンサー頼りとなります。センサーを今よりも広範囲かつ、高精度で稼働させることができれば、より安全かつ効率よく作業を行うことが可能であると考えます。
電波の死角の解決が、今回解決したい主要課題となります。
■ 課題解決方法
死角をなくす方法として、「わな作動センサー」の「中継器」設置を考えました。
電源もないような場所に設置することや、今後の機能追加等を考えた場合には、独自設計の方が都合がよさそうなので、自作することにしました。
基本的には、通信のバケツリレーを行えばよいのですが、狩猟用に下記の要求を追加しました。
要求 | 理由 |
交換バッテリー駆動であること | バッテリー切れとなった際には、満タンのバッテリーと交換することで簡単に復旧できるから。 |
Solar Panelで自動充電したい | 山中に固定するので、わなセンサーのように定期的に見回ることがないから。 消費電力をSolar Panelで再充電することで、バッテリー無交換で運用できるから。 ※ 消費電力は太陽光で十分なはず。 |
バッテリーのみで1ヶ月以上稼働したい | 天候の悪い日が1ヶ月続いても、稼働しつづけたい。天候の悪い日が続く場合は、なおさら、交換作業を行いたくない。 |
Solar Panelは移動の際に畳めること | 山へ持ち運ぶので、なるべく携帯が楽な形状としたい。 |
今後開発するセンサーに対応できること | センサー開発の度にファームウェア修正を行うは面倒なので、この機会に機能追加しておきたいから。 |
運用形態は、下記のように親機の電波が届くところは、親機が直接通信し、届かないところは、中継器経由で通信を行います。親機、中継器のどちらも電波が届く場合は、どちらかが適当に通信をおこなうこととします。
主要な山頂付近に一基設置すれば、確実に尾根1つ分の死角がなくなるはずです。
尾根の表側、裏側も関係なく、最大周囲半径10Km圏内の見通しが利くようになります。
私の場合、2基程設置すると、冬の狩猟場所も含めた全領域が見通せるようになるはずです。
ということで、早速制作を開始です。
■ 制作過程
基板設計と筐体設計を同時に行いました。
今回基板は、既存回路の修正だったので、CNCで基板を試作しないでいきなり海外発注しました。
発注してから10日ほどで基板は届くので、その間に筐体設計をおこなっていました。
〇 基板デバッグ
発注した基板は下記のように仕上がってきました。
ざっと、配線確認だけして早速部品実装開始です。
今回は、MCUにATTINY401を使用しました。ATTINY201では、制御に必要なリソースが足らなかったので、リソース量倍のATTINY401を使用しました。
ATTINY201が60円、ATTINY401が70円で、リソース量倍で10円の差なので、ATTINY401の方がお得な感じがします。
肝心の回路ですが、思うように動きませぬ…肝の電源制御が息してません。
既存回路の変更、機能追加と舐めておりました。
そのつけを払うように、ハマりの日々が約1週間続きました。
ちょうど体調を壊して外出できなかったので、その時間を有効に生かすことができました。
デバッグが終わった基板が、これ…ボロボロです。
印部分に修正が入ってます。見た目もひどいです。
あまりにひどいので、検証機はこれでいきますが、次の1号機は基板改修の予定です。
バグ修正ついでに電源制御系デバイスも小型部品に変更する予定でいます。
部品変更の理由は、ちょうど手持ちの主要部品がなくなったことと、今まで使用していた中華部品に中古と思える部品が混じっていたので仕入れ先を変更する予定です。
まあ、それでもなんとか肝の電源制御がうまく動作するようになって一安心です。
〇 筐体(ケース)
ケース設計は、安くて発電効率の良いSolar Panelを使いたかったので、下記のような不格好な設計となってしまいました。Solar Panelは屋根ではなくベロとして開きます(後ほど紹介)
複数のSolar Panelを組み合わせて丁度よいサイズを作り出すこともできますが、割高なので、なるべく安く収まる部品に限定しました。
組み立ては下記のようにケースを3Dプリンタで制作し、Solar Panel、防水パッキン、アンテナ等をセット後、配線や基板、バッテリーをセットしていきました。
組みあがった姿は、こんな感じです。
これではよくわからないとおもいますが、実際に固定する姿はこんな感じです。
トレイルカメラ等でよく目にするのは、屋根代わりにSolar Panelを配置する手です。
ですが、その方法だと大きいSolar Panelを搭載するのは無理なので、自分はベロにしてみました。Solar Panelがそこそこ大きいので苦慮した結果です。
この辺のセンスはゼロなので、生暖かい目で見守ってください。
このデザインは、持ち運びの際は、Solar Panelは傷がつきにくい方向に折曲る上、発電効率の良い30度で開くようになっています。中継器を南方向に設置すると効率よく発電するはずです。
Solar Panelが大きく、風雪が心配なので、今年、冬の日本海を経験させてみようと思っています。Solar Panelは、重力だけで開くようになっており、風にあおられやすいので、Solar Panelをロックする部品を追加予定です。
ちなみに搭載したバッテリーは約5週間以上は持つはずです。
日本海側の冬の天気だと5週間ぶっ続けで、雨 or 雪というのはあるかもしれませんので、猟期中に試験して試してみようとおもいます。
■ 今後
まだ、試験投入までにやっておかないといけない作業があり、試験準備中です。
主には、親機と子機のファームウェア更新作業です。
これらの作業が終わり次第投入してみるつもりでいます。
中継器の投入結果につきましては、すこし時間が空くとおもいますが、報告したいとおもいます。
通信は室内で確認済みで、この辺は心配していないのですが、物理的に壊れないで冬を越せるかが最大の難関だと思っています。
(ベロが壊れないとよいのですが…)