「箱罠センサー初号機 次号機に向けた運用不具合のまとめ」で、次号機で解消すべき問題を列挙していましたが、これらを解消した2026版箱罠センサーの制作を行いました。
昨年の夏前に次号機を投入予定だったものの、家庭事情で趣味に没頭する時間がなくなったことと、初号機の様子をみてから投入判断をしたい気持ちが大きくなったので延期していました。
初号機回収から既に4か月以上経過しています。
2026年3月現在、やっと、2026年度のシーズンで投入の目途が立ったところです。
6月に入るとウリ坊たちがうろつき始めますが、それまでには、なんとか間に合いそうです。
現在は評価も完了し、休日に完全家内制手工業で必要台数を製造中です。
基本原理や構造、コンセプトは初号機から大きく変化していないものの、システム面での機能追加とともに、初号機で判明した不良個所の改良、改善を行いました。
■ 外観
外観の紹介です。
2026版箱罠センサーは、以下の4つのモジュールで構成されています。
箱罠センサーは、獲物を検知して箱罠の扉を閉じるだけの機能ですが、オプション品を追加することで、より便利になるような構成にしています。

| モジュール | 機能 |
| ➀ 箱罠センサー | 箱罠センサーの本体です。 捕獲は、本体だけあれば可能です。 ②、③、④のオプションを装着することにより、より便利な機能を付加する構成となっています。 |
| ② 保護板 | 箱罠センサーは箱罠天井に設置して使用しますが、箱罠センサーより広い面積で接地することでより安定した設置が可能です。 また、安定性とともに獲物が箱罠センサーに衝突した際の盾としての役割もあります。 |
| ③ 太陽光パネル | 箱罠センサー内部のバッテリーを充電するために使用します。1ヶ月も雪に埋もれるような天候でもなければ、バッテリー無交換での運用が可能となります。 |
| ④ 通信ユニット | 「わな管理システム」に接続するための通信ユニットです。 通信ユニットを介し、ターネットに接続することで、携帯、PCから箱罠の状況確認、設定変更等が可能になります。 私の目指す狩猟DXは、この装置なしでは成立しないと思える程、重要な機器です。 |
2026版箱罠センサーは、トップヘビーな素人デザインではありますが、箱罠センサーと太陽光パネル、通信ユニットの配置が自然な感じに仕上がったとおもいます。
下記のように箱罠センサーの蓋を開けても、太陽光パネルや通信ユニットが邪魔することなく蓋が開くので、パネル操作やバッテリー交換等の作業に支障はありません。

■ 2026版箱罠センサー 改良点
初号機で発覚した問題については、2026版ですべて対策しました。
下記に対応内容の概略を記載します。
記載項目以外にも「わな管理システム」としての機能追加や改善を施していますが、ここでは割愛させていただきます。
「No.6 光学センサー動作」は、センサーを見破ったイノシシにインタビューできないので、できる限りの対策をおこない、フィールド評価を行うこととしました。
| No. | 部位 | 問題 | 対策 |
| 1 | ケース | 炎天下でケースが変形するリスクがある | ケース素材を耐熱性や強度のあるPETGへ変更しました |
| 2 | 操作パネル トグルスイッチ | 雨やほこりで故障するリスクがある | トグルスイッチの接点保護のため汎用の防水カバーで保護しました |
| 3 | 操作パネル ロータリーエンコーダー | 同上 | ロータリーエンコーダーの接点保護カバーで保護しました |
| 4 | 光学センサー、基板 | 空気に触れる配線が錆びるリスクがある | ➀ 光学センサー基板を含むすべての基板、太陽光パネル基板面を樹脂コーティングしました ② 光学センサー配置部にパッキンを入れ、湿気、潮風の侵入箇所をふさぎました |
| 5 | バッテリー稼働時間 | バッテリーが1週間程しかもたない | ➀ メイン基板の電力消費量を抑え、約2週間程度動作するようにしました ② 太陽光パネルを追加することで、バッテリー無交換で動作可能です |
| 6 | 光学センサー動作 | イノシシに気づかれたことがある | 視力のよいイノシシであっても認知できないレベルの発光量、発光時間に調整しなおしました |
| 7 | 遠隔状態監視/操作 | 悪天候や急用などが発生した場合は、遠隔で状況確認、捕獲停止などをおこないたい | 既存の「わな管理システム」に通信ユニット経由で接続することで、PC、携帯から罠の状況確認、設定が可能になります |
緑字部は、塩害対策、湿気対策となります。
初号機を1年間運用した結果、箱罠の設置環境が想像以上に過酷であることが分かりました。
1年程度であれば故障もないでしょうが、それ以上は、初号機を回収した状況からすると厳しいと感じます。
製造の手間が増えてしまうことになりますが、故障してしまっては元も子もありませんので、問題の発生した部位は塩害、湿気の対策を行いました。
完全密閉、防水は仕組み上難しいものの、耐用年数が少しでも伸びるように対策を行いました。
緑字の対策について、簡単ですが以降で紹介させていただきます。
§ No.3 操作パネルトグルスイッチ
トグルスイッチの不具合は、悪天候時の中で箱罠センサーの蓋を開けた際にスイッチ接点に水分が浸入してしまったために発生したと考えます。
そこで、対策は下記のようにトグルスイッチ全体をゴム製のカバーで覆うことで防水処理しました。

このような部品が世の中にあるとは知らなかったので、見つけたときには感激しました。
「トグルスイッチカバー」と呼ばれている部品で、少々高め(1個100円)ではありますが、接点とスイッチ固定部の防水が可能です。
使用しているトグルスイッチにジャストフィットします。
トグルスイッチカバーの色は黒しかありませんでしたので、2026版箱罠センサーのパネル色を黒で統一しました。
§ No.4 操作パネルロータリーエンコーダー
ロータリーエンコーダーの不具合もトグルスイッチ同様に、接点部分に水分が浸入したために発生しました。
ロータリーエンコーダーの汎用防水部品はなさそうでしたので、部品を制作しました。
ローターリーエンコーダーは、回転とプッシュスイッチで構成される接点なので、完全防水は難しいです。
ですが、少々の雨では乗り越えられないような防護壁で接点を覆った上に、キャップを被せて使用するので、水の侵入を高確率で防止できるはずです。傘と長ぐつのような対策です。
下記はローターリーエンコーダーのキャップを外した写真ですが、下記のようにキャップの下に防水部品を装着しています。

§ No.5 光学センサー/基板
基板類ですが、水分が直接付着しなくても、空気中の湿気により錆びなどの腐食が発生します。
自分の地域の塩害はかなりのものです。
そこで、洗濯機の基板のように樹脂で箱罠センサーの全基板をコーティングしました。
水分の多い場所で使用する電気機器は、基板類がコーティングされていることが多いですが、この対策を真似させていただきました。
コーティングにより、少々水分が付着した程度では腐食は発生しにくくなります。
同様にコネクタ類の金属がむき出しになっている箇所もコーティングを施しました。

ただ欠点もあり、コーティングを施した基板は、デバッグや基板修正が面倒になるのが欠点です。
テスターを当てても反応はないですし、半田は溶けません。
塗布後はバグのないことを祈るのみです。
光学センサーの基板は、同様に樹脂コーティングを施した後で、ケースとセンサー部を密着させるためのパッキンを装着しました。
見にくいとおもいますが、黒い四角(光学センサー)の周りにわずかに見える灰色の部分が密着用のパッキンです。
初号機は、この付近を中心に潮の匂いがしたこともあり、入念に対策しておきました。

■ 通信ユニットのバリエーション
今回、改善点の検証とともに可能なところからコストダウンを検討中です。
部品代で高額な部品は通信系なので、ここをなんとかしたいと思っているところです。
まずは、簡単なアンテナ部品を従来品より多少性能は落ちるものの、安価な部品へ変更することを検討中です。
ですが、通信機器を野山で使用する関係で、心配な自然現象がいくつかります。
そこで、2026版箱罠センサーでは、通信ユニットを比較・評価用の為に2タイプ用意しました。

コストダウン品は、アンテナ長が短くなる関係で、通信距離や耐えられる気象条件等も悪くなるはずです。今期は、自然現象と通信品質の関係に注目しつつ評価しようと考えています。
■ 箱罠センサーを用いた猟法に幻想は禁物
この機会に、自戒と基本に立ち返る意味で、箱罠センサーを用いた猟法をざっくりですが記載します。
色々なメーカーから箱罠センサーが発売されていますが、たまに捕獲率が劇的に上がるような表現がされていることがあります。
ですが、箱罠センサーは、あくまで「不可視な蹴り糸」なので、導入したからといって、劇的な捕獲率アップは無理です。
箱罠センサーは、捕獲にまつわる作業を軽減し、ターゲットをデジタル化することにより、捕獲補助を行うツールです。
箱罠センサーを導入しても、箱罠猟の全作業や、猟師さんの知識と経験を置き換えることは、まず不可能です。
極端な話、餌撒きを箱罠センサーがやるなど、まず不可能です。
先輩猟師さんに冗談で「やったら?」とは言われましたが、そんな技術は持ち合わせていません(笑)
箱罠センサーに過度な幻想を抱かないようお気をつけください。
箱罠で捕獲までのは、ざっくりと下記のような作業があるかと思います。
作業内容や理由を自分なりに記載しておきます。
あくまで私見ですので、参考程度に参照していただければと思います。
- 箱罠の設置
箱罠をどこに、獣道に対してどの方向で設置するによりm捕獲率に大きく影響します。
箱罠の設置場所、位置が捕獲率アップの重要な条件であるとおもいます。
イノシシが一頭もいない場所や獣が通らない場所に箱罠を設置しても、捕れないのは必然です。 - 箱罠の管理
獣道や餌場に仕掛けても、見るからに怪しい箱罠には餌を撒いても近づいてきません。
周囲の状況に合わせ、箱罠の中に枯れ葉等を撒いたり、箱罠の上をドーム状に草をはわせたりするのは、なるべくイノシシにとって怪しくない雰囲気を醸し出すためです。
また、箱罠周辺を草刈りするのは、本来の獣道から箱罠までの人工的な獣道を作るためです。
獣道=他の獣が来たとイノシシが感じれば、安全バイアスが掛かり近寄ってきやすくなるからです。 - 獲物の誘引
1、2がうまくいき、獲物がうろつき始めたら、うまく餌を撒いて、箱罠の奥に入るように誘引します。警戒心の強いイノシシの場合、腑抜けにするまで、結構気を使います。 - 捕獲作業
3までうまくいったら、狙った獲物が取れるかどうかは別にして、かなりの確率で捕獲できます。
ですが、狙った獲物を捕獲するためには、高等技術や創意工夫、経験が必要です。
また、炎天下や寒い中で、獲物の動きや大きさを予想しながらセットするのは時間がかかりますし、結構大変です。
賢い個体だと、イノシシと猟師の読みあいとなります。
蹴り糸設置中にアブ等の虫に襲われることもあります。
自分の箱罠は吸血アブが多いのでほんとに嫌です。
捕獲結果は、かなりの確率で、下記のようになります。
・親子狙いのはずが、ウリ坊だけ捕獲してしまい親は二度と近寄ってこない。
・親がいつまでも入ってこないまま、他の方のわなにウリ坊が捕獲されてしまい、二度と姿を見せない
親子で捕獲できた時には、達成感が半端ないです。
たまに、賢い個体に当たると、月明りや接触で蹴り糸がバレて、餌を食い逃げされます。
1~4の作業の中で、箱罠センサーが貢献できるのは、「4.捕獲作業」だけで、あとは猟師さんの腕にかかっています。
とはいえ、大変な蹴り糸の敷設作業が軽減されるうえに、正確に箱罠の中に入ってきている獲物の大きさが判別できるので、捕獲戦略を立てることができ、捕獲タイミングを逃しません。
親子狙いの場合、親が入ってきていれば、確実に親を狙えます。
逆に数日(経験値に依存)待っても親が入ってこない場合、ウリ坊だけを捕獲することも可能です。
蹴り糸のように獣にバレて、警戒される可能性は、ほぼありません。
さらに、箱罠センサーで箱罠を遠隔監視/操作可能なことのメリットが大きいと考えています。
獲物が来ていないのに現地に出向いたり、悪天候時に獲物を捕獲しないように箱罠をロックするなど、作業量軽減と安全性を確保できます。
趣味とは言え、私の目指す狩猟DXは、狩猟者の作業軽減や安全性の確保を目指しています。そのためには、遠隔監視/操作なしでは成立しないと考えています。
